【書評】「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」コロナとワクチンの基礎知識が網羅できる良書

モデルナワクチンの2回目の接種を待つ、なりタイです。

今回は、ウイルス免疫学の専門家・峰宗太郎医師が出版社の編集者Yさんとの対談形式で新型コロナについて解説する「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」の感想を書きます。

医師の解説書にありがちな専門家のひとり語りではなく、我々と同じ一般人目線を持つ編集者の疑問に答えていくスタイルが特徴で、新型コロナに関する全般的な知識をわかりやすく身につけられる内容になっています。

「そもそも感染症ってなに?」「治療薬ってどんなのがあるの?」「ワクチンてなに?なんで2回打つの?」「PCR検査って結局なんの意味があるの?」ーーなど、誰もが持つであろうシンプルな疑問に小気味よく答えてくれています。
編集者Yさんの鋭い質問の数々が光ります。

シンプルな表紙から少し硬そうな内容なのかな?と、先入観を持っていましたが、いい意味で予想を裏切られました。
ワクチン接種を迷っている人や、新型コロナの基礎的な知識を身に着けたい人にオススメの本です。


この本はこんな人にオススメ!

新型コロナやワクチンに関する正しい知識を身につけたい人
✔ ワクチンを打つべきかどうか迷っている人

目次

そもそも感染症とは?

編集者Yさんは、対談の冒頭、「感染症とは何のことか?」と投げかけます。

なんとなくのイメージはありましたが、誰かに説明しろと言われたらできない人が大半ではないでしょうか。
峰先生は「何らかの病原体が、ヒトの身体に侵入して起こす疾患を指す言葉」とシンプルに答えます。

病原体とは、「病気を起こす小さなモノの総称」とも説明します。
さらに、具体例として「細菌」や「ウイルス」などを挙げています。
この部分だけ見ても解説の丁寧さが伝わりますよね。

次に、「ではウイルスとはなにか?」とつながります。
峰先生は、「遺伝子とその容れ物を指し、別の生物の細胞に侵入し、その増殖機能を乗っ取って自分の遺伝子のコピーを増やす」と言います。

読み進めていく上で生じる読者の疑問に即座に答えてくれるのが素晴らしいですね。
疑問に対する答えがしばらくこないと、読者は疑問自体を忘れてしまいがちですから。
対談本の利点でもあります。

さらに驚いたのが、我々が当然のように使っている「感染」という言葉。
峰先生は「ウイルスが細胞で増殖開始した時点」とします。
もちろん知りませんでした。
こんな2字熟語ですら、正しく理解できていなかったのかとはっとさせられました。

ワクチンあれこれ

ワクチンには種類がある

ワクチンとは免疫をつけるもの。
これが本書を読む前の、私の認識でした。

峰先生はこれに対し、「擬似的に病原体のようなものを作ってヒトの免疫を反応させるもの」とします。
事前の理解で間違いはなさそうですが、より詳しく説明するとこうなるようです。

さらにワクチンには大きく3種類あると話します。
「生ワクチン」「不活化ワクチン」「組み換えワクチン」
どれもなんだか難しそうで理解できるか不安になりましたが、ここにも峰先生のわかりやすい解説が炸裂します。

生ワクチンは「弱めたウイルスを体内に入れ免疫をつける」。
不活化ワクチンは「ウイルスを殺し、免疫がウイルスと認識できる成分だけを注入する」。
組み換えワクチンは「ウイルスの成分の1つだけを人工的に作って打つ」

どうですか。違いがはっきりしていて、わかりやすいですよね。
ただ、新型コロナのワクチンはこのいずれにも属しません。
「核酸ワクチン」という新型で、「ウイルスの成分のタンパク質をヒトの身体のなかで作らせる」という発想です。

具体的には、「新型コロナの一部の遺伝子の設計図を我々の体の中に打ち込み製造する」と書かれています。
それまでの3種のワクチンが生まれた経緯を知っていれば、理解しやすいですよね。
コロナ禍前にはヒト用の医薬品として承認されたことがなかった、最新型のワクチンでもあります。
コロナのおかげで、一気に開発が進んだんですね。

ただ、国内で開発が進むワクチンは核酸ワクチンではなく、従来の不活化ワクチンや組み換えワクチンのようで、ここは面白いポイントです。

ワクチンを2回打つ理由とは

ワクチン接種が加速し、気になっている方も多いであろう、ワクチンを2回打つ理由も説明されています。

「1回目のワクチンの段階での、細胞への刺激が不十分なことがあるんですね。なので、これを十分に刺激してあげるために、ブーストしてあげる」

「対応できるレパートリーを増やしている」

これについては非常にわかりやすいたとえも用意されています。

「同じウイルスに反応する中にも、ウイルスのどこを見て、あっと気がつくかの違いがある。そこで、人間の顔に例えれば、ウイルスの鼻で認識する、目で認識する、口で認識する」

うん。わかりやすい。
この文章を読むだけで、2回打ってブーストするという言葉の理解が一気に進みます。
ようは2回打つことで威力を増すというよりも、対応力を広げるという意味だとわかりますよね。
ここは非常に興味深い点でした。

PCR検査って結局意味あるの?

これまでPCR検査を受けたことがなかったので、そもそも検査ってなにをどうするの?というレベルでした。

峰先生はここでも基本から丁寧に答えてくれています。

「まずは鼻から綿棒を入れて、喉の奥を触るんです。咽頭のぬぐい液というのを採取します。唾液からもできるようになりました」
「採取してきた液体からRNAというウイルスの設計図の書き込まれた核酸だけを抽出する」
「RNAは不安定なこともあり、これを一度、DNAに変換します。そして特異的なDNAの部分だけを増幅する。PCRとは、この増幅反応のことです。増幅して、特異的なDNAが存在したことが確認されると、この人の体内にウイルスがいたと判定できる」

アルファベットの難しい単語も出てきますが、ここまで読み進めていたなら大丈夫です。
検査を受けた人から採取した液体で、PCRという特殊な反応が出るかどうかを見るわけです。
これがわかれば、検体が取り切れてなかったり、増幅の手順を間違えたりすると、正確な結果が出ない可能性があるということまでわかりますね。
PCR検査の精度が7割といわれているのも納得できるわけです。

精度が7割にとどまることから、PCR検査は感染が疑われる人に対して行うことで初めて効果を発揮するといえますよね。陽性を確定させるという意味においては意義があるわけです。

一方、精度の低さを考えると、感染が疑われる事情のない人が受けてもし陰性だったとしても、本当に感染しているかどうかは言えません。

最後に

最終章で峰先生は情報の信用性についても言及しています。

ネット上にはコロナに関する誤った情報があふれかえっています。
情報を簡単に信じるのではなく、情報を吟味する大切さを説いています。

この本に書かれている内容すら疑うよう読者に促しているから驚きです。

これこそが、峰先生が一番読者に伝えたかった部分なのかもしれませんね。

結論

本書は新型コロナを基礎から理解するための必読書。
対談のパートナーを務める編集者が、我々一般人が持つ疑問点を次々にぶつけてくれるので前提知識がなくてもわかりやすく学べる。


これからは、以前、前後編2回にわたって紹介した「なりタイ流読書術」に基づいてインプットしたものを、今回のような書評という形でどんどんアウトプットしていきたいと思っています。


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